子どもの発達や自立のための優れた取り組みやプログラムは、数多く存在しています。
そんな中、子どもの発達や自立に必要な内容項目は何か、それをどのような方法・手だてで獲得させるか、などについての体系的な視点やその具体化に際しての有効なプログラムの一助になればと思い、アメリカのミネアポリスに所在するサーチ・インスティチュートが提唱する「40の発達資産」に着目しました。
2007年12月に同研究所を訪問し、多くのスタッフとの意見交換を通して、発達資産の意味と価値を再認識しました。
発達資産(Developmental Assets)とは、子どもが発達する上で獲得することが望ましいとされることがらを意味し、大きく内的資産(20資産)と外的資産(20資産)に分けられます。
内的資産は、子ども の好ましい内部的な成長・発達を反映する特性や行動を意味し、具体的には、肯定的な価値観の獲得や学習への強い参加や社会的な能力の形成などが含まれます。
外的資産は、子どもがまわりの世界(家庭、学校、地域社会、マスコミ等)から受け取る好ましい経験を意味し、具体的には、支援やエンパワーメント、規範や期待、そして時間の生産的な利用などが含まれます。
発達資産プロフィールは、内的資産・外的資産を含めて、全体としてどれだけの発達資産を有しているかの経歴全体を示し、その人がどのような状況にあるかを説明するものです。
内的資産:子どもの内部的な成長・発達を反映する特性や行動のこと。
- 肯定的な価値観の獲得
- 学習への強い参加
- 社会的な能力の形成
- 自己に対する自信
外的資産:子どもがまわりの世界(家庭、学校、地域社会、マスコミ等)から受け取る経験のこと。
- 支援やエンパワーメント
- 地域社会とのかかわり
- 規範や期待
- 時間の生産的な利用
サーチ・インスティチュートの調査研究結果によると、
「若者が発達資産を多く獲得すればするほど、それだけ好ましい積極的な発達をする可能性が高くなる。また、資産が多いほど他者を支援したり、他者との違いを大切にしたり、リーダーシップを発揮することについて、ますます意欲的になる。さらに、資産の獲得(形成)を支援する地域社会が若者達の好ましい発達を促進することにより、地域社会もまた若者達の発達によって活発化される。」 といいます。(立田慶裕・岩槻知也著『家庭・学校・社会で育む発達資産』 北大路書房、2007年参照)
発達資産の獲得はこのように子ども個々人の発達だけでなく、他者との関わり能力の発達や地域社会の大人たちの発達、結果的に人間発達に好ましい地域の環境の形成と結びついてくるという相互関連的なサイクルを成しています。
この点に、他にあまり類を見ない、発達資産の考え方の大きな特徴と価値があると考えています。