日本の状況は?

 

日本でも、いじめ、非行、学力低下、不登校、自殺など、子どもの病理や学校の病理を証明するデータは枚挙に暇がありません。子どもの問題傾向を論じるとき通常、学校教育がやり玉に挙がりますが、それは一面的と言わざるを得ません。
消費社会のなかにどっぷりつかり、自ら努力して何かをやり遂げるという気力や意欲が低下傾向の子どもの急増を考えるとき、家庭はもちろん、地域社会やマスコミ世界の問題にも目を向けなくてはなりません。
子どもの問題は私たち大人の問題でもあるわけです。

今日の子どもの社会的、道徳的発達状況を見るとき、他者への関心の欠如、耐性の欠如、自己肯定感の欠如が特に気になります。


この背景には、学力の高低で「いい子」「悪い子」に峻別する風潮も少なからずあります。
しかし、さらに重要なことは、私たち親や大人が、学校製の価値観に依存し、子どもの現実から逃げていること、子どもの教育に自信を失っていることです。

このような状況が続く限り、私たちが求める子どもの自立とは無縁な、ひ弱で独りよがりな子どもが大量に再生産されてくるでしょう。この流れをどこかで断ち切らなくてはなりません。

家庭が子育ての基礎であることを否定する者は誰もいません。
また、家庭と学校と地域の連携による子育ての大切さも早くから強調されてきました。
そして、各地域でさまざまな実践が展開されてきました。
しかし、現実には、子どもの育ちはむしろ悪化の一途をたどっています。
改正「教育基本法」の中で、新たに「幼児教育の大切さ」(第12条)、「家庭教育の大切さ」(第15条)、さらに「家庭と学校、地域の連携による子育ての大切さ」(第16条)の条項が付加されましたが、その理由もこの状況を打破したいという願いから出たものと推測されます。

日本全国で、家庭・学校・地域が連携して子育てをする活発化しています。
その一つの取り組みの視点として、学校の中で、家庭の中で、地域の中で、それぞれの場において、大人と子どもが向き合う時間をつくることが大切です。

国の各省庁だけでなく、地方自治体でも子育て問題は緊急の課題となっています。各種の子育て支援策が打ち出され、問題解決のために努力しています。

山口県では平成19年11月に「やまぐち子育て文化創造条例」が制定されました。
単なる子育て支援ではなく、地域に根ざしていた子育てに関する共通の文化が崩壊した今日、それに代わる新たな子育ての文化をいかに地域に創造していくかというチャレンジングな提案です。

教育基本法の新しい条項やこの条例の趣旨を単なる謳い文句で終わらせないために私たち大人は今何をすべきか、が厳しく問われています。

 

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